お天気の良い昼下がり、水夢はソファーでお気に入りの本を読んでいました。
窓辺にあるソファーは、暖かな日差しと心地よい風を感じられる、お気に入りの場所です。

のどかで幸せな一時。
だけど、本が手から離れて閉じてしまっても、水夢はそのまま。
それもその筈、暖かな日差しに水夢はすっかり寝入ってしまっていました。
お気に入りの本も、遂に膝に落ちてしまいました。
更には肘掛けにもたれかかって、本格的に眠る体勢です。
そこへ稀純ちゃんがやってきました。

「……何でこんなとこで寝てんだ? ボンネットも被ったままで」
「おーい、ねーちゃん起きろー。水夢姉〜。起きろー、風邪引くぞー」
ゆさゆさ。

いくら揺さぶっても水夢は起きません。
一度寝たら、テコでも起きない人なのです。
「あーもう……起きやしねぇ」
ふぅ。

姉の寝穢さを良く知っている稀純ちゃんは、重いため息をつきました。

「ねーちゃーん……俺に運べって言うのかよ、無理だぞー。綉京あたり呼んできてちゅーしてもらうぞ、おいー……」

腕力には余り自信のない稀純ちゃん、困り果てています。
仕方ないので、とりあえず楽な姿勢をとらせます。ボンネットも外して、本と一緒に脇へ。
気の利く弟さんです。

そんなことも知らずに水夢はいよいよ絶好調に夢の中です。
「しょうのない姉だぜ……水夢ねぇ、毛布持ってきてやったぞー。風邪なんか引かれたら俺が優紗ねぇに怒られるんだからなー」

なんだかんだ言いつつ、優しい弟くんはお姉さんのために毛布を持ってきてくれたようです。
「これでよし……ッと」
ぽんぽん。

暖かい毛布に、気持ちよさそうに眠る水夢。
「お休み……めーちゃん」
ぱたん。

稀純ちゃんが出ていった後、水夢の眠りを護るように、カーテンがそよいで水夢を包みました。






絵本風味(?)小話。
ソファーを買ったときからやってみたかった、ソファーでうたた寝しちゃう
水夢に、誰かが毛布持ってきてくれる話。
最初は次から次へと人が来て毛布だらけにされる話だったんですが、
時間&場所的都合で稀純ちゃんとのほのぼの姉弟愛になりました。


蛇足。
稀純ちゃん達はお互いに名前をちゃん付けで呼んでいるんですが、
稀純ちゃんだけ思春期を迎えて「姉ちゃん」か「○姉」って
呼ぶようになって。でもふとした時に昔の癖でちゃん付けで呼んでしまう。
それがちょっと恥ずかしい稀純ちゃん。

と言うどーでもいい設定があるのです。