やっと見つけた彼の人は、まるでかくれんぼでもしているよう。
上から見つけた! と言う私を見てくすりと微笑う。
「ふふ、捕まえられる?」

私が捕まえようと躍起になったのが
分かっているのだろう、
先程までよりも楽しそうに、
ひらひらと逃げる彼の人。
待って!
そう声をかけても彼の人には届かない。
いや、届いているのだろうけれども止まってはくれない。
あくまで私が捕まえなくてはならないのだ。
微笑いながら遠ざかる彼の人を慌てて追いかける。
もう、何の為に追っているのかも分からなくなりそうだ。
やっと見つけた彼の人は、
手の届かない壁の向こうで。
こちら側で悶える私を見ては
くすくすと楽しげに微笑う。
「私を捕まえられたらの話」
何度も同じ事を言いながら、決して捕まってはくれない。
螺旋階段の上にいる彼の人を見つけて急ぎ登ってみれば、
彼の人はいつの間にか階下に。
とんだ鬼ごっこだ。
「よくここまで来れたわね。
もう少しよ」
必死に追いかけていると彼の人が寂しげに微笑った。
ゴールは近いと言う事だろうか……?
走り回って絶え絶えの息で為す術なく背を見送る。
彼の人を追い詰められたのは
あの光り輝く橋の先。
いつの間にか向こう側に来ていたらしい。

「あの橋を渡ってお帰りなさい」
「待って、まだ話を―…!」

その瞬間、目の前が真っ暗になった。
遠のく意識の片隅で彼の人の声が聞こえた。

ああ、そうか。
私の知りたかった事の答えは―…


〜貴方の知りたい事はなぁに?〜
貴方の望むままにお答えしましょう。
この世の全て、時にこの世以外の事も全て見通すこの瞳で。
何でもお教え致しましょう。
さぁ、貴方の知りたい事はなぁに?
求めるままに与えましょう。

ーただし、私を捕まえられたらの話ー


完全なる雰囲気です。
なんちゃって小話。
水夢の設定を活かそうとしたらこうなった。何でだ。

水夢は占い師で依頼者の知りたい事を夢に見る。
所謂お告げ的な事もしたり。

そんな彼女ならあるかもしれない、
そんな不思議な話。