海賊ごっこ〜1〜
帝国海軍が誇る無敵のちびっこ提督・紫貴はその日も日課である見回りに出ていた。

「ちびっこ言うな」
何だよ、ここまで晴れ晴れしい修飾語つけまくってやったのに。
「ちびっこが余計だ」
……じゃあ帝国海軍子供軍曹。
「だから子供じゃないっ!」
どっからどう見てもお子ちゃまなんだから仕方ないじゃん!
「子供が提督になれるかっ!」
…じゃあ近所のお子さん。
「……子供提督で良い」

と、その時。絹を引き裂くような乙女の悲鳴が響き渡った!
ハッと顔を上げ、声のした方へ走り出す紫貴。
「ふはははははは、姫はもらった!」
紫貴が駆けつけた時は既に遅く、帝国一の美姫と誉れ高い緋月姫は
恐ろしい海賊の手に落ちていた。
それは七つの海を股に掛ける、最強最悪の海賊、キャプテン・ロキであった。

「きゃー、助けてー(棒読み)」
「……ひーちゃん、もうちょっと臨場感欲しいな」
「……た、たす、助けてー?(やっぱり棒読み)」
「うん、ごめん無理言った」
「おのれ海賊め! 卑しい手で姫に触れるな!」

愛しい姫を助けるため、単身海賊に立ち向かう紫貴提督。

「この剣の錆にしてくれる!」
「ふはは、これでも私に刃向かうというのか?」
「きゃー、紫貴様お助け〜(かなり棒読み)」
「緋月、何か台詞間違ってるよ……」
脱力した提督、気を取り直して。

「くっ、卑怯な! 姫を離せ!」
「海賊とは卑怯なものだよ」
「くッ……まともに剣も持ててない癖に!」
しっくん、そこはツッコミ不可です。
「第一なんだって海賊の癖に日本刀なんだ!?」
「特技は居合い抜きだから?」
「真面目に答えろ!」
「西洋風の剣、それ一本しかないから! なのに紫貴がさっさとそれ持ってっちゃったから!」
「悪かったよ!」
「ふはははははは、分かったらその剣をひきたまえ!」
「くっ、こんなまともに剣も持てない輩に帝国海軍が手も足を出せないなど……」

だからそこはツッコミ不可領域ですってば。
「ふっ、私の勝ちだな……」
「きゃー、助けてー(やっぱり棒読み。しかも無表情)」
「くそう……」
黙って睨み合うこと数分。
「……?」
「しまった、両手が塞がってて戦えない!!」
「アホか……」

どうするどうなるキャプテン・ロキ!
提督は無事、緋月を奪い返すことが出来るのか!?
次回「五百円玉に誓った愛・緋月はもう少し怖がってよ!」乞うご期待!


次回予告は嘘っぱちですが続きます〜