〜貴方の知りたい事はなぁに?〜
貴方の望むままにお答えしましょう。
この世の全て、時にこの世以外の事も全て見通すこの瞳で。
何でもお教え致しましょう。
さぁ、貴方の知りたい事はなぁに?
求めるままに与えましょう。

ーただし、私を捕まえられたらの話ー

私があの不思議な人に会ったのは、
見覚えのない森の中。
いつ迷い込んだとも知れぬ森の中、
彼の人はおりました。
眠っているのか、起きているのかも
判然とせぬ様で微動だにせず存在して
いる様は、まるで人ならぬ者のようでした。
ふと目があった(ように感じました)途端、
彼の人は微笑み、斯う言いました。

「貴方の知りたい事はそれ?
良いわ、教えましょう。ただし、私を
捕まえられたらの話」

私は何も言ってなどいないのに、彼の人は
そう言ってくるり、身を翻してしまいました。

後には呆気に取られた私が立ち竦むのみ。
再び彼の人にまみえたのは、光り輝く橋の手前。

謎めいた微笑みの人は、またも言うのです。

「望むままに答えましょう。知りたい事全て。
けれどそれは、私を捕まえられたらの話」
次に会えたのは、花畑の中。
光る髪を風に揺らし、微笑む彼の人は私を見ると
再び身を翻しあっという間に見えなくなってしまいます。
彼の人を追って入った荘厳な屋敷の中。
微笑み目を閉じる彼の人はまるで眠り姫。
私の知りたい事……そんなものあるのだろうか。
何を教えてくれるというのだろうか。
私の疑問が聞こえたように彼の人は

「望むままに」

そう言ってまたも姿を消した。
次は大きな椅子に座る彼の人を、遠目に見る。
それでもこちらには気づいているようで、微笑う。

「ここは今は亡き偉大なる人の屋敷」

「その人が私の知りたい事に関係が?」

「それも全て、私を捕まえられたらの話」

初めて会話が成立したというのに、
何もかも解らないままだ。


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